昨日、
演出・振付:インバル・ピント
脚本・演出:アミール・クリガーの
舞台『ねじまき鳥クロニクル』を観てきました。
一夜明けても
感想をどこから話せばいいのか...
すべての要素がすごすぎて
話しきれそうにないです。
観終わって自分の中に
温泉を掘り当てたかのような
舞台への情動が溢れかえってきていて
今も熱冷めやらず。
悔しさともいいきれない
爆撃をくらって何も言えません、
強烈でいて繊細、鮮明に脳裏に焼き付く
すべてのシーン...。
それでも強いてこの酩酊状態で言えるのは、
私が舞台に関わる人間でよかったということ。
こんなに素晴らしい作品がこの世界にはあって
舞台芸術の可能性を無限に見せてくれたことに
深く感謝を申し上げたい。
インバルの演出・振付について
畏れ多くも言わせてもらえるなら
「私がやりたかった群舞だった」
踊りは、ダンスではないと思っていたんです。
だから、自分の肩書きを「ダンサー」というには
いつも強い違和感があって
でも、アーティストだと分かりにくい。
インバルの振付を見て
私はDance artist と名乗っていこうと思った。
インバル・ピントはイスラエルの人で
にも書いたように私は私のすべての製作や表現を
今後、世界平和に向けていこうと決めて
活動を再開した。
私たち日本人にとって地震が当たり前に
日常にあるように
イスラエルの人たちにとって爆撃が
日常にある。
私たちは震度3くらいの地震速報では
机の下に潜ったりはしない。
イスラエルの人たちは
○分後に爆撃がきますよと速報が流れても
シェルターに逃げる人、逃げない人がいる。
私も幼少期から成人期にかけて
父からの暴力や性的暴力、暴言について
さほど非日常感を覚えず抵抗をしなかった。
そこからどうにかしようだなんて
思ったことがなかった。
もっと別の角度、視座からの解決を考えた。
そこでそれはやっぱり芸術なのではないかと
思う自分がいる。
そういった土壌で育った人間の環境や文化背景。
そうしたものがあの作品を生み出したんだって思ったら
何か...何かはわからないけれど
きっと私にとって強烈なヒントがあるに違いないと感知した。
芸術は娯楽ではない。
人類を更新させる先端技術だと私は思う。
非言語の世界から見えないものをキャッチアップして
言葉でもなく、数字でもないところから
集合意識に新しい概念を投下する装置なのだと思う。
そこから、学者や研究者、哲学者、起業家、経営者、民間人と
波紋のように新しい考えや文化が降りていくと考えている。
だから、私は世界の先端で
いいことも悪いことも分け隔てなく
ちゃんと自分の肌で感じてこなきゃいけない。
そんなふうに目醒めさせられるような振付、演出だった。
鮮明に遺るダンスシーン
何を見させられているのかわからなくなる、
でも確かに五感でなく六感では
はっきりクリアに言わんとしていることが伝わってくる
そんなダンスシーンの連続だった。
役者も役者ではなくそこには「人間」が立っていた。
そんなの初めて見た。
人間の心より下と上の階層意識や
もっと深淵の意識が
目眩く視覚化され確かに私たちは毎日そこに触れていて
尚且つ自分の中にも無意識下にあるものだってわかる。
重力がなくなり
時間がなくなり
場所のない空間を私たちは皆持っている。
だから鮮明に印象に遺るのだと思う。
ダンス、とは言えない。
あれは意識を表現している。
村上春樹の原作の力強さを
こんなふうに顕現するダンサーの身体美が
もうすごく光っていた。
ちゃんと時空が歪み
宇宙はこうやってできているのを思い出す感覚でした。
今や、映像技術で魅せることが
いろんな意味で簡単になったけれど
舞台美術や肉体で表現し切って魅せるという
圧倒的な覚悟と執念みたいなのものが見えて
謎な涙が溢れ続けた。
人間ってすげーなって...
本当にそう思ってしまう。
今月26日まで芸術劇場でやってます
まだまだ語りきれないこの作品の魅力だけど
ぜひ、すべてのできるだけ多くの人に
見ておいてもらいたい作品です。
とてつもない工数と人間の数と
それからそれぞれの人生経験という何十万時間をかけて
手がけられた作品であるから
今、この時に見れるのは今だけ。
そういう舞台の世界に触れてみてほしいと思います。
舞台詳細
舞台『ねじまき鳥クロニクル』
会場
東京芸術劇場
上演期間
2023年11月26日まで
チケット
S席:平日10,800円/土日祝11,800円
サイドシート:共通8,500円
(全席指定・税込)
CAST
<演じる・歌う・踊る>
岡田トオル:成河/渡辺大知
笠原メイ:門脇 麦
綿谷ノボル:大貫勇輔/首藤康之(Wキャスト)
加納マルタ/クレタ:音 くり寿
赤坂シナモン:松岡広大
岡田クミコ:成田亜佑美
牛河:さとうこうじ
間宮:吹越 満
赤坂ナツメグ:銀粉蝶
<特に踊る>
加賀谷一肇
川合ロン
東海林靖志
鈴木美奈子
藤村港平
皆川まゆむ
陸
渡辺はるか
(五十音順)
<演奏>
大友良英
イトケン
江川良子
STAFF
原作 村上春樹
演出・振付・美術 インバル・ピント
脚本・演出 アミール・クリガー
脚本・作詞 藤田貴大
音楽 大友良英
照明 ヨアン・ティボリ
音響 井上正弘
ヘアメイク 宮内宏明
通訳 鈴木なお、天沼蓉子
美術助手 大島広子
振付助手 皆川まゆむ
演出助手 陶山浩乃
舞台監督 足立充章
主催 ホリプロ、TOKYO FM
共催 公益財団法人東京都歴史文化財団 東京芸術劇場
協力 新潮社・村上春樹事務所
後援 イスラエル大使館
企画制作 ホリプロ